2018年08月26日

資産家通信㉑ 知識と価値観を相続させるということ

私のセミナーは、耳障りが良いものばかりではなかったと思います。特に、建築提案時の一般的な収支計画と不動産管理会社の実績値を反映させた収支計画の比較は厳しい見解でした。

また、内容も複雑で分かりにくかった方も見えたと思います。人口が増加していき、賃料が上がっていき、地代も上がっていった時代なら、「アパートを建築すれば相続税が安くなります。借金は賃料で返済できます。」と単純な話で良かったと思いますが、現状では、「アパートを建築すれば相続税は安くなります。ただし、借金が賃料で返せるとは限らないので慎重に考えないといけません。」という様に、話が少し複雑になります。私も建築提案をしますが、かなり限定的になったと思います。

当社は、不動産管理を主な生業としていますので、管理物件が減少してしまう様な話をすることは当社の存続を危うくするものです。しかし、旧来の提案を続けていくことは地主さんに大きな負担をかけてしまう可能性があると考えています。現状の法律や税制、旧来の運用方法では、あと数世代で地主さんはほとんどいなくなるのではないかとさえ思います。不動産管理会社は今後、ただ物件を管理し、守っていくだけではなく、地主さんを守り、豊かにすることで共に存続し、豊かになっていくべきだと考えています。

建築時の収支計画以降、実績値の統計を取ることはありませんでした。今回統計を取り、実績値を反映させた収支計画を作成しましたが、これを公表していくかは不動産管理会社としても厳しい選択であったと思います。
資産コンサル事業の立ち上げにあたり、「不動産から人へのシフト」という私の考えを承諾していただいた会社に感謝しています。

地主さんには、世代を越えても地主さんとあり続けていただくために、全体像を把握するための最低限の知識を身につけていただきたいと考えています。そのために、一通り終わるまでは、セミナーを続けていく予定ですが、中には自分に関係ない話もあると思います。自分はアパートを建築しないから関係ないという方も見えると思います。しかし、アパート建築のメリットもデメリットもきちんと把握しておいていただきたいと思います。そして、次世代になぜ建築するのか、なぜ建築しないのかという知識と価値観を引き継いでいっていただきたいと思います。

相続は点ではなく、世代を越えた線で考えなくてはいけません。みなさんも豊かに暮らしていかなくてはいけません。そしてご先祖様が残してくれた不動産はその可能性を秘めています。それを子どもさん、お孫さんに引き継いでいく必要があります。相続は、準備をしていようと、していまいと確実に発生します。
今後の人に頼ったまま地主さんであり続けるのが難しい時代では、単に不動産を相続させるのではなく、地主さんとしての最低限の知識とみなさんの価値観を相続させることが重要です。


2018年08月20日

8/19セミナーのお礼

昨日はたくさんの方にセミナーにご参加いただき、ありがとうございました。

受付を始める前は、誰も来なかったらどうしようと思っていましたが、
昨日は、こんなにたくさんでどうしようと思いました。

無事に終わって何よりです。
9/23のセミナーもお待ちしております。

8/19セミナーのお礼

8/19セミナーのお礼


2018年08月05日

資産家通信(20) 土地を売却したら終わりなのか

わたしのお客さんは、ほとんどの方が年配です。祖父母くらいの方も大勢見えます。そういった方たちに、仕事を通していろいろな価値観や考え方を教えていただきました。最先端の情報や手法を学ぶために東京で行われている資産税の研修を定期配信で受講していますが、わたしのコンサルのほとんどは、実体験とお客さんから教えてもらったことで構成されています。

10年ほど前、私が地主さんの相談をはじめた当初、ほとんどの地主さんは、先祖伝来の土地を売却するという考えはなく、売却のお話しさえ、あまりしてはいけない様な雰囲気でした。
その様な中で、何件も不動産の売却をお手伝いさせていただいた地主さんがみえました。わたしがなぜ売却するのか尋ねたところ、
「農業は十分してきたが、時代が変わった。今後土地を所有していくのは大変。今は、孫に教育費がかかっていて子どもが大変。土地という資産を教育に変えて生前に渡す。」
と教えて頂きました。その方は、土地を売却して、贈与税がかからない110万円の範囲で何人ものお孫さんに贈与していきました。
わたしはその話を聞いて、資産=不動産とは限らず、資産とは、その方や家族を豊かにするものなんだと感じました。もし、その不動産が家族に問題を起こすようなものなら、それは負債なのかもしれません。資産とは時代や家族によって形を変えます。

一時期は、その方とその方のどの家族よりもたくさんお話ししていたと思います。
その方の言葉は、今でもわたしの中で資産となって残っています。

その方は亡くなってしまいましたが、本日、その方の息子さんから仕事のご依頼をいただきました。


2018年08月04日

資産家通信(19) キャッシュフローいろいろ

実務上、収益物件のキャッシュフローといっても様々の意味で使われています。

・収益100
 →100
・収益100-修繕費・管理費10
 →90
・収益100-修繕費・管理費10-固都税7
 →83(NOI)
・収益100-修繕費・管理費10-固都税7-資本的支出12
 →71(NCF)
・収益100-修繕費・管理費10-固都税7-借入金返済50
 →33
・収益100-修繕費・管理費10-固都税7-資本的支出12-借入金返済50
 →21

全く違う数字のことを同じ言葉で話しているので、どの数字のことを言っているのか意識する必要があります。
ちなみに、所得税は個人によって税率は異なるので考慮されないことがほとんどです。


2018年08月04日

資産家通信(18) 賃貸物件の消費期限とキャッシュフロー

比較的多い相談に中に、建築業者さんから「そろそろ借金も完済なので、建替えどうですか」「空室も多くなって、修繕費もかさんできて大変ですよね」「相続税も節税になりますよ」と言われているが、借金もしたくないし、どうしようという相談があります。

賃貸物件の消費期限は、税法上の減価償却期間ではなく、ましてや借入期間とは全く関係ありません。借主さんが決めることです。
借り手がいる以上は、その物件には、賃貸物件としての価値があるということです。建築基準法の旧耐震等により安全性が確保できていないことなどを除けば、需要がある限り賃貸物件の寿命は続いていると考えられます。
生活に影響を及ぼすような構造部分や建物の躯体*に多額の修理が必要になってくる場合は解体も検討する必要がありますが、設備交換等の資本的支出と構造部分の経年劣化は区別して考える必要があります。

修繕費がかさんできても、借金を完済すれば手残りはかなり多くなる方がほとんどです。修繕費や空室に意識がいってしまいがちですが、最終の手残り(キャッシュフロー)を意識してください。相続税がそれほど多くない方は、そのキャッシュフローを数年貯めるだけで、節税対策しなくても納税資金が準備できます。

※躯体:建物の構造を支える骨組みのこと。




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