2022年04月25日

地主さんが法定相続分について考えること〈後編〉

地主さんが法定相続分について考えること〈後編〉 今日は先日お話した分割に関しての実務的な問題点の後編をお話しします。

令和の時代はすべてが平等です。跡継ぎ以外の子どもさんからは、男女差や出生順などいつの時代の話だと云わんばかりの主張をされます。跡継ぎさんの難しい立場について、考えました。
前回は、跡継ぎさんの未来のことについてお話ししました。今回は、同じく跡継ぎさんの過去についてとその考え方についてお話をします。

跡継ぎさんの「過去の時間、労力」に関して
親が高齢になると、相続前に前述した地元のお付き合い等は相続前に引き継がれている場合が多いです。また、同居の苦労もあります。実務において意外と多い不満が、「旅行に行けなかったこと」です。同居している親が高齢になり、体が不自由になってくると遠出しにくくなります。例えば60歳定年時に、親が80歳、それから20年近く行動が制限され、相続の際には自分が遠出するのが大変になる。独立した兄弟は好き勝手いろんな場所に出かけていた。些細なことに感じるかもしれませんがこの様なことの積み重ねが相続争いの原因となります。「家」を守るために費やした時間や労力を軽視するべきではありません。これは「法定相続分」には考慮されません。

跡継ぎさんの「過去のお金」に関して
跡継ぎさんが同居されている場合、共同でお金の管理をされている場合があります。生活費、医療費、介護費等が親子双方の財布から出し入れされている場合や不動産運用の資金管理を子どもさんに任せている場合がありますが、相続では明確に個人ベースで資産を分ける必要がありますので注意が必要です。
賃貸物件の大規模修繕用に資金を積み立てていたとしても、法定相続分で分割となると、跡継ぎが賃貸物件を相続した場合、大規模修繕用の資金は別の子に相続させなければならなくなり、安定的な賃貸物件の運用ができなくなってしまう場合があります。

少し詳しい方は、「特別寄与料」という言葉をご存じかもしれません。これは、「亡くなった方に対して、介護などの労務を提供していた親族が相続人に、その寄与に応じて請求できる金額」のことですが、実務において、「特別寄与料」という言葉がでてきた時にはすでにモメにモメている時です。また、第三者が、各々が納得できるような算定はできません。

跡継ぎ以外の子どもさんからしたら、「同居していて金銭的な援助も受けていただろう」という意見が出ることもあります。そしてまさにその通りな場合も多いです。

各々の「家」はすべて違い、第三者が算定することはできません。そのため被相続人である親が上記のようなことを考慮し、資産の分け方を決めておく必要があります。

相続に「たては〇、よこは×」というものがあります。これは、2人いる親のうち、1人目の親が亡くなった場合の相続は、もう一方の親がある程度相続を仕切るためモメにくいが、最後の親が亡くなる際の相続は、子ども同士での話し合いになるのでモメやすいというものです。家系図で見て、上の代の親と下の代の子がいる相続はモメにくいが、同列で横並びの子ども同士での相続はモメやすいということです。
乱暴な言い方をするならば、親が決めたことなら、完璧でなくともある程度みんな従うということです。

不完全な内容でも、一生懸命に考えていただくことが相続対策で最も重要な子どもさんを争わせない対策である分割対策となりえます。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
こういったコンセプトで始めた「付言から始める相続対策セミナー」はコロナを理由にずっと延期してしまっていますが、みなさんはぜひ考え、伝えてください。必要であれば、個別にご相談させていただきます。ームページからでも承ります。ブログも更新中です!そして、動画も配信しています。まだ少しづつですが、基本的なことからわかりやすく図解を交えてお話しています。よかったら観てください。

 


2022年04月23日

地主さんが法定相続分について考えること【前遍】

地主さんが法定相続分について考えること【前遍】

相続対策の優先順位は、「(1)分割、(2)納税、(3)節税」だと何度もお伝えしてきましたが、本日は、分割に関しての実務的な問題点をお話しします。

法定相続分」とは、民法で定められた相続人が取得する相続割合のことです。子どもであれば平等に分けるというのが原則です。

この平等に分ける「法定相続分」という法律と、地主さん特有の先祖伝来の「家を守る」「跡を継がせる」という感覚のギャップが、しばしば相続争いの原因となります。

跡継ぎ以外の子どもさんが、「みんな同じ子どもなんだから平等に分けよう。法律でも決まっているし。」という主張はごもっともです。

それでは、法定相続分以上に取り分を主張する地主さんの跡継ぎは欲張りなのでしょうか。

不動産はお金と違って細かく分けられないので相続争いの原因となるというお話は、今回は置いといて、「跡継ぎ」という観点でお話しします。
 

跡継ぎさんの「未来の時間、労力」に関して
墓守、地元のお寺、神社のお世話、村のお世話、地元のお付き合い、親戚づきあい。これを跡継ぎに引き継がせた場合は、相続後も跡継ぎさんは時間や労力的な負担を担っていくことになります。
引き継がれてきた「大きな自宅」や「習慣・伝統」を今後も継続させていくなら、やはりある程度、跡継ぎに資産を寄せる必要があります。大きな自宅や伝統等も相続を考える上で重要なポイントとなりますので、「どの様なものを、どれくらい引き継がせるか」考えておく必要があります。

跡継ぎさんの「未来の時間、労力」に関して
まず自宅が維持していけるかという問題があります。地主さんのご自宅は大きい場合が多く、固定資産税、光熱費、修繕費、剪定等の管理費等の固定費が高く、これを不動産の運用益からまかなっている場合がほとんどです。相続で収益物件が無くなってしまった場合、後継ぎは今までの生活が継続できなくなってしまう場合があります。
また、不動産運用が一定の規模以上になると、会社経営に似た側面を持ってきます。いくつかを持っていることで補完しあって、安定を保っています。例えば、収入が多い借入のある賃貸物件と収入が少ない駐車場です。相続税の納税資金が確保できない場合や賃貸物件の借り入れの返済が滞った場合は、換金性の高い不動産である駐車場を売却することによって「家」を守ります。これが相続の際、収益の少ない駐車場だけでは「家」を維持していくことが困難になってしまったり、借入のある賃貸物件だけになってしまうとこの運用が上手くいかなくなると「家」自体が破綻してしまったりする可能性があります。


後編へ続く・・・
 今回は、跡継ぎさんの未来のことについてお話ししました。次回は、同じく跡継ぎさんの過去についてとその考え方についてお話をします。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
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