2023年11月02日

地主さんの平等分割の問題点(1)

借入を伴った不動産運用は事業の性質が強くなるので、安定性を確保するためには一定以上の規模が必要となります。

たとえば、借入のあるアパートを所有している場合、大規模修繕の備えて一定の現金を持っておく必要がありますし、相続や不足に事態に備えて、駐車場等の売却できる不動産も所有しておく必要があります。こういった資産の多様性や資産規模を保つことが運用の安定性を確保するために必要です。

かつての地主さんの相続は、家督相続が基本でした。ざっくり言うと先祖代々、長男に財産を丸ごと受け渡していくということが一般的でした。それが今では平等分割である法定相続分という認識が広まり、跡継ぎ家系以外への分割割合が増えてきました。

これは価値観が変化してきたことによるものです。かつては「家族の名誉や伝統を守る」といった価値観が強かった地主家でも、現代では「個人の幸福や自由を重んじる」といった価値観が主流となってきました。相続においても「跡継ぎ家系だけでなく、他の家族も平等に資産を受け継いでいくべきだ」という考え方が増えてきました。

この価値観の変化自体の良し悪しは別として、実務をしている観点から言うと、相続による資産の分散は、本家の運用の安定性=生活の安定性の問題と常に対立構造が発生するため、この点に関して非常に注意深く考慮する必要があります。

相続により本家が破綻するというのはこれが起因していることがあります。本家のみならず、本家以外でもリスクの偏った資産を相続するとこれが原因で破綻してしまう場合があります。

一番の問題点としては、相続の際、相続税を納税するための相続評価をベースとした評価基準では、この問題は浮き彫りにならないということです。相続税計算では、資産割合を把握することはできますが、各相続人が相続する資産の運用の健全性は評価できません。

セミナーでは、相続対策の優先順位として、(1)分割、(2)納税、(3)節税とお話ししており、分割対策=争続対策(揉めない様に分割)としておりますが、実務的な問題としては、相続により分割された各資産の運用の健全性が悪化することも大きな問題点としてあり、これが顕著なのが本家であり、跡継ぎ家系で増えてきております。

次回は、実務的な対策をご紹介したいと思います。




このページのトップへ

copyright (C) NOMURAKAIHATSU.CO,LTD All rights reserved.