2024年03月16日

資産コンサルとは?

資産コンサルとは?

 

5年ほど前に、「資産コンサルティング部門」を立ち上げさせていただき、「山本の資産家通信」と銘打って情報発信させていただいております。

不動産業者なのに、なぜ不動産コンサルティングでないのか。そもそも資産コンサルティングとは何なのか。説明するのに分かりやすい案件がございましたのでご紹介します。個人の特定を防ぐため、また、分かりやすくするために一部情報を変更しております。

 

あるアパートオーナー様が、自分が亡くなった後、子どもさんの生活資金を確保するために、古くなったアパートの建替えを検討したいとご相談いただきました。不動産管理会社としてはありがたいお話でしたが、よくよくお話を聞いたうえで、私は別のご提案をしました。

理由としては、アパート建築は必ずしも生活資金の確保を約束するわけではないからです。アパート建築にはその後の「経営」が伴います。借入を返済しながら運用するには、不動産の運用判断の煩雑さ、収入の不確定さ、そして、基本的には経過年数が経るにつれ問題が増え、手残りが減少するものです。

このようなリスクを減らせないかと考え、代替え案として、下記の様な生命保険をご提案しました。自己資金、もしくは建替え予定地の売却資金により、一括加入をします。

 

・契約者 :親

・被保険者:親

・受取人 :子

・保険料 :一括3000万円

・保険金 :親死亡後、子が亡くなるまで毎月15万円(年180万円)

      20年保証があり、仮に子が早くなくなってしまっても、その相続人に

20年間は保険金の支払いが行われる。トータルで180万円×20年

=3600万円の受け取り予定です。

 

この保険はドル建て債権で設計されているため、上記の様な好条件での契約が可能となりました。円建ての保険ではこのような条件は出ません。もちろんドル建てなので為替リスクがあります。ただし、お客様ご要望が「生活の確保」ということは、生活を確保するための物品やサービス購入するための「購買力」の確保と言えます。ご子息の年金が月額10万円の予定です。円高になれば円換算での保険金は少なくなりますが、円が強いということは円での購買力があるということなので円建てのフローである年金が購買力のリスクヘッジとなります。逆に、円安になれば円の購買力は弱くなりますが、円換算での保険金は多くもらえるということになります。

 

また、運用期間を最大化(今が一番若いので今保険契約)し、保険の条件を最大化するために一括で保険料を支払いましたが、保険金を受け取る際は、分割で受け取る予定です。これは投資の最適解のひとつである積立を、保険金を受け取るという出口でやるという設計です。こうすることで20年、30年の間に円安だったり、円高だったりの変動はあるものの均されて為替リスクは平均化されます。

 

保険金と年金の合計20万円~25万円程度あれば、仮に施設に入所することになったとしても経済的な問題はクリアできる予定です。賃貸物件の賃料では生涯にわたってこのような安定したキャッシュフローを確保することはできません。

 

資産コンサルティングとは将来の株価や為替の予想をするのではありません。投資運用の理論上の最適解や市場平均のリターンは把握していますが、市場平均を大きく上回る儲け方は分かりません。どの様な経済状況になろうとも、どちらに転んでも、大丈夫なように資産状況を調整します。

 

多くのお客様は問題に対する対策についての選択肢を把握されていません。それどころか何が問題かを把握できていないお客様が多いのが実情です。まず、漠然とした不安等をお話ししていただき、問題を具体化し、明確にします。次に、それに対する対策を不動産のみに囚われない選択肢をご提案したいと考えております。これが「不動産」コンサルティングではなく、「資産」コンサルティングとさせていただいております所以です。

 

もちろんこのような対応は、不動産業者だけでは難しい場合もあるので、他業種、他士業の方に協力していただくことも多いです。

 

当社の資産コンサルティング部門を窓口にご相談いただくことで、地主様にとって、業種を超えてワンストップで最大限のサービスをさせていただくことを目指しています

 

 


2024年03月08日

キャッシュフローツリー

当社は不動産の賃貸、売買、管理のみならず、賃貸物件建築、駐車場、住宅用定期借地、事業用定期借地等あらゆる不動産活用をご提案もさせていただいております。

 

今回は賃貸物件建築のご要望いただいた際に、当社コンサル部門がどの様な評価基準でご提案しているかの一部をご紹介させていただきたいと思います。

 

賃貸物件建築の際、最も確認すべきことは相続税がどうなるかではなく、賃貸運用に問題がないかです。借入の返済期間の30年~35年を通して返済に問題ないか、空室にどれだけ耐えられるか、意外にもこの2点さえも確認せずに建築されている場合があります。

そこで今回は、CPM(米国不動産経営管理士)の指標であるキャッシュフローツリーをご紹介します。ややこしいので少し簡略化しますが下記の様なものになります。

 

GPI(総潜在収入)       :100

EGI(実効総収入)       :95   ※ざっくり空室率△5%。

OPEX(運営費用)       :△18

NOI(純営業収益)       :77

ADS(元利返済額)       :△53 ※返済期間30年

BTCF(税引前キャッシュフロー) :23

 

上記の数値を算出したうえで、賃貸運用の健全性を確認します。具体的には大きく2つ、借入金の返済に問題がないか、空室率に余裕があるかを確認します。

 

借入金の返済に問題がないか=DCR:NOI/ADSで算出。1.20以上ならOK。

今回の物件の場合、77/53=1・45のためOK

 

空室率に余裕があるか=BER:(OPEX+ADS)/GPIで算出。70%以下ならOK。

今回の物件の場合、(18+53)/100=71%のため若干空室率の余裕なし。

 

DCRとBERを算出した上で、次世代の方にも安心して所有し続けていただける物件とするために、今回の物件では頭金を入れていただきました。さらにDCRとBERの性質上の返済期間を長くすれば安全率は高まりますが、リスクを間延びさせないためにも返済期間は35年でなく、30年とさせていただきました。

 

直接建築業者様ではなく、コンサル部門にお問い合わせいただくことで様々な建築業者様の特色をお話しした上で建築業者様を選定していただき、建築業者様の提案のみならず、管理会社視点でのアドバイスをさせていただきことが可能です。昨今の建築費高騰状況でのフルローンでの建築の場合、DCRとBERが良くない場合、建築をおすすめしないということもありますが、賃貸物件建築の目的をよく考えていただき、ご検討していただければと思います。

なお、DCR、BERは、ご所有中の賃貸物件からも算出することができますので、興味がある方は一度算出されてはいかがでしょうか。


2024年02月09日

不動産の金利の計り方とは?

前回は金利のセオリーについて、お話しさせていただきました。今回は不動産の金利の計り方についてのお話しです。

 

不動産での金利は、金融機関さんからの借入金利ではなく、K%(ローン定数)で判断します。このK%で最も多く使われるのは、不動産投資及び建築の際に、借入に適正に使えているかどうかで使われますが、運用中の資金繰りの改善でも使うことができます。

 

計算式は、元利返済額/ローン総額となり、年間の返済額が300万円で、ローン総額が5000万円なら、300万円/5000万円で6%となります。

 

複数の賃貸物件をお持ちの大家さんから築10年くらいの賃貸物件で手残りが少ないというご相談がありました。このような場合、賃貸物件の特性として築年数が経過すればするほど手残りが少なくなっていくというものがありますので、このままほっておくと赤字物件になりません。どの様な対策をすべきでしょうか。

募集方法を変える、リノベをして賃料を上げる、管理の仕方を変える、これらは大切ですが、本質的な改善になりません。手残りに余裕を持たせるための抜本的な対策は資金繰りです。繰り上げ返済や完済計画を立てて対応します。

 

様々な要素があるので一概には言えませんが、一つの指標としてK%で判断します。例えばK%がA物件5%、B物件6%、C物件7%があるとすると、1000万円返済すると、年間の手残り(キャッシュフロー)がA物件なら50万円、B物件60万円、C物件70万円増えることになります。K%から判断するとC物件の返済をすることが最も資金繰りの改善効率が良いということになります。

 

大家さん場合は、今ニーサで話題の金融商品の購入を検討の際も、K%で繰上返済と比べてみても良いかもしれません。

 

家賃年収がいくらかなんていうのは、所有している人がその資産からどれだけ豊かさを享受できるかには関係なく、手残り(キャッシュフロー)がいくらかがということが重要となります。

特に50代、60代に相続税対策という名目で、賃貸運用の損益分岐点がギリギリで建築してしまうと、70代、80代を不安な状態で過ごさなくてはいけなくなりかねません。30%くらい空室でも赤字にならないような資金繰りで安心感を保ちながら、潤沢な手残りで豊かな生活を送っていけられるような不動産にしていただきたいと思っています。


2023年12月08日

地主さんの平等分割の問題点(2)

前回のブログの続きとなりますが、地主さんの平等分割の問題点として、「今の生活が維持できるかどうか」ということがキーワードとなります。

今の生活が脅かされそうになれば抵抗するのは当然です。これは地主さんに限った話ではありません。

たとえば実家に長男が同居、次男は別で世帯をかまえており、親に資産が自宅2000万円、現預金200万円で親の相続が発生し、60-70歳で親の財産を兄弟が相続することになったとしまし、次男が法定相続分の半分を主張したとしましょう。

次男の主張は法律にのっとった正当なものです。実家を長男に譲れば、仮に現預金をすべて相続したとしても、1/10の資産しかありません。

ただし、次男の主張通りに遺産分割すれば、長男は住んでいる自宅を出ていかなくなってしまうため(今の生活が維持できなくなるため)争いとなってしまいます。

つまりこれは資産額の分割という単純な数字の問題ではなく、不動産と生活が維持できるかという問題が入り組んだ問題となっているのです。

地主さんの相続はこれの資産規模が拡大し、先祖伝来の大きな自宅や土地を維持するための「資産税(固定資産税)」支払い、不動産経営等が絡み、さらに複雑化しています。

先ほど同様、問題を複雑化させている要因は、「不動産の問題」と「生活維持の問題」です。

そのため対策として以下のようなものがあります。

  • 金融資産割合を増やす

地主さん中には資産の八割九割が地元不動産だという方が見えます。金融資産比率が多いほど遺産分割では柔軟性が高まります。また、今後地主さんには、金融資産をきちんと確保すべき理由が3つあります。一つ目は相続税納税資金です。一昔前は相続後に土地を売却し、納税するといったことも多かったのですが、現在では相続後の売却による減税幅も縮小してしまいましたし、何よりいつ、いくらで売却できるか分からないという不確定要素を考えるとできるだけ現金で納税できる準備をしておく方が良いです。二つ目は資本的支出です。賃貸物件の設備等の交換費用は築20年以降に急激にかかりだすので積み立てておき、物件と共に相続させる必要があります。そして三つ目が分割資金です。跡継ぎ以外への相続はできれば現金で調整できると相続がスムーズにいきます。この金額は一昔前に比べて多く必要になってきています。

  • 遺産分割後の各々の不動産運用の健全性

自宅を含めて、不動産全体が維持していけられるか、また、今後、維持し続けられるかというポイントを相続後の各相続人の資産で確認します。これが「今の生活が維持できるかどうか」というポイントとなる訳ですが、相続評価では不動産運用の健全性は把握できないため注意が必要です。

野村開発、資産コンサル部門では相続前、相続後の不動産運用の健全性の確認のお手伝いもさせていただいております。お気軽にお声がけください。


2023年11月02日

地主さんの平等分割の問題点(1)

借入を伴った不動産運用は事業の性質が強くなるので、安定性を確保するためには一定以上の規模が必要となります。

たとえば、借入のあるアパートを所有している場合、大規模修繕の備えて一定の現金を持っておく必要がありますし、相続や不足に事態に備えて、駐車場等の売却できる不動産も所有しておく必要があります。こういった資産の多様性や資産規模を保つことが運用の安定性を確保するために必要です。

かつての地主さんの相続は、家督相続が基本でした。ざっくり言うと先祖代々、長男に財産を丸ごと受け渡していくということが一般的でした。それが今では平等分割である法定相続分という認識が広まり、跡継ぎ家系以外への分割割合が増えてきました。

これは価値観が変化してきたことによるものです。かつては「家族の名誉や伝統を守る」といった価値観が強かった地主家でも、現代では「個人の幸福や自由を重んじる」といった価値観が主流となってきました。相続においても「跡継ぎ家系だけでなく、他の家族も平等に資産を受け継いでいくべきだ」という考え方が増えてきました。

この価値観の変化自体の良し悪しは別として、実務をしている観点から言うと、相続による資産の分散は、本家の運用の安定性=生活の安定性の問題と常に対立構造が発生するため、この点に関して非常に注意深く考慮する必要があります。

相続により本家が破綻するというのはこれが起因していることがあります。本家のみならず、本家以外でもリスクの偏った資産を相続するとこれが原因で破綻してしまう場合があります。

一番の問題点としては、相続の際、相続税を納税するための相続評価をベースとした評価基準では、この問題は浮き彫りにならないということです。相続税計算では、資産割合を把握することはできますが、各相続人が相続する資産の運用の健全性は評価できません。

セミナーでは、相続対策の優先順位として、(1)分割、(2)納税、(3)節税とお話ししており、分割対策=争続対策(揉めない様に分割)としておりますが、実務的な問題としては、相続により分割された各資産の運用の健全性が悪化することも大きな問題点としてあり、これが顕著なのが本家であり、跡継ぎ家系で増えてきております。

次回は、実務的な対策をご紹介したいと思います。




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