2018年11月13日

資産家通信㉛ 問題をなくすつもりで問題を作っている

相続に関して、事前に対策をしておくようにとお話ししていますが、実務上の問題として相続がいつ発生するか分からず、またその際、どのような状況になっているか分からないので細部まで決めきれないということは多々あります。現段階では跡継ぎさえも決めきれないという場合もあります。
また市場がどうなるか分からないという前提であれば、不動産活用を考える際は、なるべく柔軟な対応ができる状態にしておくことが望ましいと言えます。

しかし、こうった状況で相続対策を考えようとすると節税対策のみに走ってしまう場合が多く、これは、分割等、ややこしいこと考えなくてよく、一見、表面上はみんなにとって良い対策であると見えるためですが、分割の柔軟性をなくし、また、不動産運用の柔軟性をも失っていることが多々あります。
相続対策をしているつもりで、相続の問題を作ってしまっています。

資産家通信(3) タックスドリブン


2018年09月18日

資産家通信㉙ 借入=相続税節税対策ではない

「借金をすると相続税が安くなる」「借金を返すと相続税が高くなるから返さない」という方が見えますが、これは誤解です。
不動産における相続税の節税方法は、すべて不動産の取引時価と相続税評価の乖離を利用しているだけです。
金融資産は額面通り判断されます。つまり1億円現金を持っていれば相続評価も1億円となりますし、1億円の借金を持っていれば相続評価もマイナス1億円となるので、金融資産が相続税額に影響することはないのです。
賃貸物件の建築により相続税を節税させる場合、借金を1億円して建築される方も、現金1億円で建築される方も節税効果は同じです。
地主さんは比較的に金融資産が少ない傾向がありますが、賃貸経営の改善を相談される方の中には現金をたくさん持っている方も見えます。借金を返すと相続税が高くなると勘違いされている方も見えますが、前述の通り関係ありませんので、その現金を使う予定も運用する予定もない方には、借入金の返済をお勧めしています。


2018年09月14日

資産家通信㉗ 一物四価

一物四価とはひとつの土地に4つの評価が存在することを言います。
(1)公示地価    :公的収用や民間取引の基準(国交省)
(2)路線価     :相続税評価(国税庁)
(3)固定資産税評価額:固定資産税評価(総務省)
(4)実勢地価    :取引時価

この評価の違いは気をつけないと大きな失敗を招きます。例えば、相続税を節税するための対策は、もちろん相続税評価で考えますが、相続税評価が下がったとしても、時価まで下げてしまう対策があります。優先すべき相続税の納税対策は時価評価で準備しなければいけないので節税対策にはなったが、納税できないという可能性もあります。
この観点から、私は不動産の取引時価がもっとも重要だと考えており、不動産の取引時価のもっとも近くにいる不動産業者として、相続コンサル、資産コンサルを行っています。

他の士業の方のコンサルとの違いとしては下記3点を重視していることです。
(1)不動産の時価
(2)不動産運用のキャッシュフロー(賃貸経営、生前の生活)
(3)付言(大切なものは何か考えていただく)


2018年08月04日

資産家通信(18) 賃貸物件の消費期限とキャッシュフロー

比較的多い相談に中に、建築業者さんから「そろそろ借金も完済なので、建替えどうですか」「空室も多くなって、修繕費もかさんできて大変ですよね」「相続税も節税になりますよ」と言われているが、借金もしたくないし、どうしようという相談があります。

賃貸物件の消費期限は、税法上の減価償却期間ではなく、ましてや借入期間とは全く関係ありません。借主さんが決めることです。
借り手がいる以上は、その物件には、賃貸物件としての価値があるということです。建築基準法の旧耐震等により安全性が確保できていないことなどを除けば、需要がある限り賃貸物件の寿命は続いていると考えられます。
生活に影響を及ぼすような構造部分や建物の躯体*に多額の修理が必要になってくる場合は解体も検討する必要がありますが、設備交換等の資本的支出と構造部分の経年劣化は区別して考える必要があります。

修繕費がかさんできても、借金を完済すれば手残りはかなり多くなる方がほとんどです。修繕費や空室に意識がいってしまいがちですが、最終の手残り(キャッシュフロー)を意識してください。相続税がそれほど多くない方は、そのキャッシュフローを数年貯めるだけで、節税対策しなくても納税資金が準備できます。

※躯体:建物の構造を支える骨組みのこと。


2018年07月29日

資産家通信(14) ノンリコースローン

10年ほど前、私が賃貸物件を建築する際に、融資に関して調べていて、ノンリコースローンがものすごく良いなと思いました。ノンリコースローンとは、賃貸運用が上手くいかず借金の返済ができなくなったとしても、建築した建物と建物を建築した敷地を提供すれば、それ以上の返済義務を負わないというのですが、ほとんどの金融機関が取り扱っておらず、あったとしても金利がものすごく高くなるということで断念しました。
当時は、新築の物件と、更に土地を提供しても、建築費の借金の担保として足りないのかと不思議に思っていましたが、実務に関わるようになり、その理由が分かりました。
2億円の土地に2億円の建物を建築した場合、時価としては2億円に満たないことがほとんどだということです。
つまり、この単体の土地の資産運用が上手くいかなかった場合、生活に影響を及ぼす可能性があります。生活に影響を及ぼすようでは相続税の節税どころではありません。
私の信念のひとつとして、投資家であると決心している方以外の地主さんには生活に影響を及ぼすようなリスクは取らない様にお話ししています。
ただ現状では多くの方が無意識のうちに、生活に影響を及ぼすようなリスクを取っているように感じます。
 




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